ホテル ドゥ ラルパージュの館内には、至るところに絵画が飾られています。フランスのご家庭に行くと、どの家の壁にも絵がかかっています。それらは昔からそこに掛けられたままになっているかのように馴染んでいます。
このホテルで皆さまのご覧になられている絵は、いずれもそういう雰囲気をお楽しみいただくべく、当ホテルのオーナーが一枚一枚選んだものです。
そこに一枚の絵があるだけでその場の雰囲気や空間が変わる、そのような「絵のある空間」を感じていただければ、と思います。
今回は、当ホテルのレストラン「ル・ジャルダン」にある絵画をご紹介します。
天井が高く開放感のあるレストランは落ち着いた雰囲気の内装でゆったりとお過ごしいただけます。明るい色調のピンクとグリーンの壁は南向きの窓から見える庭とつながっており、庭とレストランが一体となったような調和を感じていただけます。また、入って右手側の席にあるソファベンチはホテルのイメージカラーである深い青緑色が使用されており、対極色の赤いランプとのコンビネーションは、明るい色彩のレストラン内で一際存在感を放っています。
このようなこだわりの内装で仕上げたレストランでは、20世紀のフランスを感じさせる絵画とともにお食事をお楽しみいただけます。
まず目に入るのは一番奥の壁に飾られている作品です。
この作品はロシア出身でパリに定住した画家タルクホフによって描かれた作品です。春のプロヴァンス地方の光景を描いたもので、生まれたての子羊が力強く鮮やかなタッチで描かれています。入口側から見てもぱっと目を引く鮮やかな色使いや214cm×160cmという絵画自体の大きなサイズにもインパクトがあります。
ホールの入り口側の壁には、ルーマニア出身でエコール・ド・パリの画家、ジャンヌ・ダウールの作品があります。
この絵の中のガラス窓には鏡文字で作者の名前が描かれています。現実のガラスに書かれている名前がサインを兼ねているのです。通常サインは「絵に上書き」されており、絵のモチーフ(描かれた対象)ではないのですが、ここではモチーフを兼ねているという興味深い表現になっています。ある種、コンセプチュアルアートの先駆けとも言えます。
これら二つの作品は、レストランの壁の色と同じ淡いピンクやグリーンが使用されており、この色調が空間に統一感を生み出しています。
「乳のみ子羊と母羊」を見ながら飾り棚のほうへ進んでいくと静物画が飾られています。
左側に描かれた巨大なブリオッシュと右側に描かれた果物のみずみずしさが朝食の雰囲気を見事に表現し、しかも見る者の食欲をそそるような作品です。
レストランのさらに奥へ続く廊下の壁には点描画が二つ飾られています。
点描画法は19世紀後半から20世紀にかけて流行した画法で、ジョルジュ・スーラが確立し、ポール・シニャックが体系化しました。この手法を用いた画家たちは新印象派と呼ばれた流れの一派でした。「昼食後」の作者はポール・シニャックの妻でもありました。
廊下の突き当り左手にある個室の中には、少し落ち着いた色調の絵画が飾られています。
「植物画」は18~19世紀に活躍した、マリー・アントワネットお抱えの画家ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテが描いた作品です。この画家はもともと装飾画家をしていましたが、植物画家のヘラールト・ファン・スパーンドンクに才能を見出され、技術を学び、植物画の世界に入りました。繊細な線が織りなす花の絵は思わず見入ってしまうことでしょう。
当館には絵画がいたるところに飾られており館内に彩りを与えてくれています。
ご来館の際には、正統派フランス料理やフランス直輸入のワインとともに絵画のある空間と雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
絵画のある空間シリーズも今回でVol.4となりました。