ラルパージュ(L'ALPAGE)とは、フランスのアルプス地方の方言で「夏の高原の牧草地」という意味です。涼しく広々とした牧草地で毎夏のんびりと過ごすアルプスの牧歌的なイメージと重ね、お客様にも自然の豊かな蓼科高原でゆったりとお過ごしいただければ、という願いを込めてホテルの名前を決めました。
このホテルの造りは、高い天井、しっかりとした壁、大きな縦長の窓からあふれる光、優しく暖かい色彩、壁に掛けられた大小の絵画など、フランスの邸宅のようになっています。日本の建物にフランス的なディティールを付け加えるのではなく、建物自体を可能な限りフランスと同じに、しかし現実の日本の気候にも適合できるようにしようとしました。
実業家で美食家の父とフランス文学者の母のもとに私は生まれました。幼い頃から度々フランスを訪れ、フランスでの暮らし方に深く影響されて来ました。
同じく実業家であるフランス人の家族と知り合ってからは、フランスのあちこちの家に泊めてもらう機会が増えました。明るくゆったりとした空間、暖かく洗練され穏やかな内装、そういう家ばかりでした。高い天井と窓は圧迫感が無く、気持ちが伸び伸びできます。何気なく掛けられた絵画やそこかしこに置いてある飾り物に取って付けた感じはありません。建物と共に全てがその家族の歴史の一部であることを感じさせてくれました。
そもそも建物自体が、木や石などの天然の材料でできています。木や石に見えるのは木や石そのものであって、貼ってあるわけではありません。表面の塗料も、その薄さにも関わらず、その輝きには暖かさと深みがあります。露出した配線さえ塗装のおかげで気になりません。 何が良くて何が悪いという以前に、普通の材料でできた普通の家しかありません。パリのお屋敷はもちろん、人口数百人の村であっても、質素な家であっても、このことに違いはありません。心地よい「普通」を実現できるということ、それが文明であると強く感じざるを得ませんでした。
幸いにして私はそのような家に招かれて快適な時間を過ごす機会に恵まれました。フランスの暮らしに多少なりとも入れてもらったわけです。いわゆる高級ホテルよりも、普通に建てられた家に泊めてもらった方が、本当の生活が感じられる分、しっかり体感出来て自分の一部になります。派手なお祭りよりも日々の暮らしが心地良いのです。そのような生活を率直に羨ましく思い、心から憧れました。そして、このような「カシミアの手触りの上質な日常」をお客様にお過ごしいただければと私は考えました。
お料理についても同じ話になります。私の父はフランス語は分からないはずなのに、レストランのメニューのフランス語だけは理解できました。母方の祖父は美食家ブリア・サヴァランの美味礼讃も翻訳し、後に母は改訳を手伝いました。私が初めてフランスを訪れたのは幼稚園の頃です。それは両親に連れて行かれたフランス一周の美食旅行でした。
その後、先程のフランス人家族と知り合ってからは、各地のレストランだけでなく、家庭で食べる普通のフランス料理を知ることとなりました。洗練された軽やかな味わいなので、たっぷりと料理を楽しめます。素材の美味しさを生かすために、限りなく手間と時間をかけています。私はそれが文明の意味であると思います。それ故、毎日フランス料理ばかりを食べても、胃もたれすることはもちろん飽きることもありません。朝も昼も夜もすんなり美味しく食べられます。これが「毎日食べられるご馳走」の意味です。
長々と書きましたが、お客様に快適にお過ごしいただきたい一心でこのようなホテルを造りました。あたかもフランスの邸宅で過ごしたかのようなご滞在をお楽しみいただけるよう、スタッフ共々お迎え致します。
HÔTEL de L'ALPAGE オーナー 戸部 浩介
Restaurant & Bar
お食事
Rooms & Suites
客室