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ホテル ドゥ ラルパージュ

ホテル ドゥ ラルパージュ

〒391-0301 長野県茅野市北山4035-1820Google Maps

TEL : 0266-67-2001

※繁忙期を除く毎週火・水曜日、2月は休館とさせていただきます。

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ホテル ドゥ ラルパージュ

〒391-0301 長野県茅野市北山4035-1820Google Maps

TEL : 0266-67-2001

※繁忙期を除く毎週火〜水曜日、2月は全館閉館となります

絵画のある空間 Vol.5

ホテル ドゥ ラルパージュの館内には、至るところに絵画が飾られています。フランスのご家庭に行くと、どの壁にも絵がかかっています。それらは昔からそこに掛けられたままになっているかのように馴染んでいます。

このホテルで皆さまのご覧になっている絵は、いずれもそういう雰囲気をお楽しみいただくべく、当ホテルのオーナーが一枚一枚選んだものです。

そこに一枚の絵があるだけでその場の雰囲気や空間が変わる、そのような「絵のある空間」を感じていただければ、と思います。

今回は、当ホテル客室階の廊下に飾っている絵画をご紹介します。

当館は全部で12部屋の小さなオーベルジュ。客室は2階と3階に6部屋ずつご用意しています。

Vue animée du Vatican 
「ローマ、ヴァチカンの眺め」無名
(18世紀フランス)

2階でエレベーターを降りていただくと、まず目に入るのは「ローマ、ヴァチカンの眺め」のデッサンです。この作品は無名アーティストの作品ですが、フランスの画家ユベール・ロベールのスタイルで描かれたものです。ユベール・ロベールはヴェドゥータ奇想画と呼ばれる実在の建物、古代遺跡、架空遺跡などを描く風景画の作者として知られています。

 Eglise San Giorgio Maggiore, Venise 
「ヴェネツィア、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会」/無名
(18世紀イタリア)

南東の回廊、チェストの上方には「ヴェネツィア、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会」という作品が飾られています。

これはフランチェスコ・ティローニのモチーフで描かれた、無名アーティストの作品です。1745年に生まれたティローニは、イタリアの画家で、ネオクラシック様式のヴェネツィアのヴェドゥータを数多く描いたことで知られています。ヴェドゥータとは、都市の景観を極めて精密かつ大規模に描いた絵画、または印刷物のことを指します。

本物に比すとかなり素朴でコピーとは言えませんが、逆に素朴さの中にある種の味があり、一つの作品として面白い絵画です。

 Place Saint Marc, Venise
「ヴェネツィア、サン・マルコ広場」無名
(18世紀イタリア)

南側の回廊、21号室の横の壁には、18世紀イタリアの 「ヴェネツィア、サン・マルコ広場」が飾られています。

ヴェネツィアの風景画としては最も一般的なモチーフです。回廊のアーチの高さと人物の大きさを手前と奥とで比べると分かりますが、パースペクティブの取り方が独特です。奥の人物は回廊のアーチよりも大分小さいのですが、手前に来ると、アーチの半分くらいまで大きくなっており、特に中央部の人物が目立ちます。ある意味、舞台の書割りの前にいる役者を描いている雰囲気を感じることができます。

(人物は点景で)広場をテーマとしているようでもあり、広場を舞台にした人物がテーマのようでもあります。サンマルコ広場というヴェネツィアで最もありきたりのモチーフの絵を見て、広場という都市空間の在り方を考えてしまうのは考え過ぎかもしれません。

Panier de fleurs 
「花籠」無名
(18世紀イタリア)

上の画像は、「花籠」という絵画で、26号室の横に飾られています。

花束は静物画の古典的なモチーフですが、多くの場合、花は一種類ではなく様々な種類が集められます。時には同じ季節に咲くことの無い花が「写実的」に描かれ、現実には存在しない理想の花束の表現となることもあります。
それに対してこの花籠にはバラと勿忘草しかなく、非常にシンプルに描かれているところが特徴です。

2階の廊下に飾っている絵の中でも、大部分を占めるのが、「流行の新しい庭園、イギリス中国式庭園のディティール」です。

Détail de nouveaux jardins à la mode. Jardins anglo-chinois./Georges Louis LE ROUGE
「流行の新しい庭園、イギリス中国式庭園のディティール」ジョルジュ・ルイ・ル・ルージュ
(18世紀フランス)

18世紀にジョルジュ・ルイ・ル・ルージュ(フランスの地図制作者、版画家、建築家)が製作した本の、製本前のページをバラバラに額装して展示しています。本書は当時18世紀に流行したイギリス式庭園を中心にした各地の庭園を紹介しており、庭園の眺めや平面図、散在する東屋(フォリー)の図面で構成されています。

イギリス式庭園とは、風景式庭園とも呼ばれるスタイルの庭園で自然の風景を模した庭園のことです。幾何学的な造形のフランス式庭園(ヴェルサイユ宮殿の庭園の主な部分)の後に流行しました。フランス式は宇宙は幾何学的な秩序で構成されているという考え方を庭園の形で実現しました。従って道路は直線ですし樹木も四角や円錐に刈り込まれています。

一方でイギリス式は、「自然」の風景を庭園に取り入れるという考え方ですが、それだけでは、イギリス式庭園が様々なフォリー(小さな建築物)に満ちていることの説明がつきません。そもそも、建築物としてのフォリーの語源は狂気ではなく、木の葉(フォイユ)や枝で屋根を覆った小屋です。

実はこの「自然」とは現実のヨーロッパの風景ではなく、風景画や奇想画を投影した景色のことなのです。例えば、18世紀には黒いガラスの手鏡に風景を映して眺めることがありました。その手鏡に映すと目の前の景色が有名な風景画家クロード・ロランの風景画に見えることからクロードグラスと呼ばれていました。

それゆえにイギリス式庭園には中国のパゴダ(シノワズリー)、エジプトのピラミッド、古代ギリシャローマの神殿、ゴシック様式の廃墟、廃墟を模した建物、人口の滝と言ったフォリーが散りばめられているのです。いわばシノワズリー的な諸々の物を庭園に実際に建てているのです。シノワズリーとしての風景を庭園にしたものとも言えます。まさに過剰な趣味の現れであり、狂気(フォリー)なのかもしれません。

さらには、庭園を一巡りすれば(当時の想像上の)世界一周を体験できるテーマパークのような物とも言えるでしょう。ライブラリーバーには、ル・ルージュの本のリプリントがあります。「流行の新しい庭園、イギリス中国式庭園のディティール」の全体をご覧になっていただけます。

2階は廊下を1周できる回廊式のフロアであることに比べ、3階はコの字の造りとなっています。

また中心の壁がななめにせり出していたり、床には置き型のランプを並べているため、屋根裏部屋風の雰囲気を味わっていただけます。

そんな3階の廊下には、一連のデッサンが飾られています。

études de botanique
「植物画集作」無名
(19世紀フランス)

その大半は無名画家による植物のエチュード、習作です。皆さんの思い浮かべるデッサンの多くは、白い紙に木炭や鉛筆で描かれた物だと思いますが、それに対してこれはグレーの紙に鉛筆と白チョークのハイライトで描かれています。

まず、地がグレーなので全体の調子が落ち着いて見えます。それに加えて白の表現が独特です。白い紙の場合は何も描かれていないことによりハイライトを表現するのですが、このように色の付いた紙では白を書き加えられるのが特徴です。「黒が無い、塗り残しの紙の色の白」と「白チョークを乗せた白」とでは、結果の白さが同程度でも描く心持ちが異なると思います。無名画家の地味な習作ですが、そういう表現のありように着目しても面白いと思います。

Architecture imaginaire
「幻想的建築」Simonti atelier Deglane
(19世紀フランス)

西側の廊下が南側の廊下に突き当たる正面には大きな絵があります。鉛筆画に水彩で色を付けたデッサンですが、テーマははっきりしません。湖畔のカジノのプロジェクトとも、1900年万博のプロジェクトとも言われます。どちらにしても実現しなかったプロジェクトを提案した絵のようです。とは言え、船の様子を見ると現実的な絵とも思えません。

一つはっきりしているのは、このような建物や風景があったら楽しいだろうと思わせることです。当然のことですが、絵は必ずしもそこにある現実を描く必要はなく、見る人の想像力を楽しませる道具であれば良いという例だと思います。

Sainte Foy près de Lyon/Jean Jacques de BOISSIEU
「リヨン近郊サントフォア」ジャン・ジャック・ボアッシウ
(18世紀フランス)

3階北側廊下の最後にある上の絵画の作者は、18世紀から19世紀初頭に活躍したフランスの画家で、主に肖像画、風景画、日常生活の情景を描きました。写実主義的なアプローチが特徴でオランダ絵画の影響を強く受けており、光と影の効果的な使用と建築物の細部へのこだわりが見られます。

この「リヨン近郊サントフォア」のデッサンもその作風が存分に現れている、彼らしい作品といえるでしょう。

さて今回の記事では、客室階の絵画の一部をご紹介させていただきました。2階と3階では廊下の構造から、並んである絵画のジャンルまでそれぞれ異なる雰囲気をお楽しみいただけるようになっています。ご宿泊の際には、ぜひお泊りになる階以外のフロアも覗いてみてください。

当館には絵画が至るところに飾られており、館内に彩りを与えてくれています。ご来館の際には、ぜひごゆっくりと館内をご覧いただき、フランスの邸宅に滞在しているかのような雰囲気をお楽しみくださいませ。

絵画のある空間シリーズも今回でVol.5となりました。是非、過去のシリーズもご覧くださいませ。

Vol.1はこちら

Vol.2はこちら

Vol.3はこちら

Vol.4はこちら

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