ホテル ドゥ ラルパージュに足を踏み入れると、様々な照明器具が美しく館内を照らしています。それぞれ種類や作られた年代は様々ですが、そのどれもが空間の雰囲気を壊すことなくホテルの雰囲気に馴染んでいます。照明自体は煌びやかでありながらも、当ホテルが大切にしているフランスの邸宅感を崩すことなくそこに存在しているのです。
この記事では、多種多様なホテル ドゥ ラルパージュの照明についてご紹介いたします。
ホテルに入りすぐ左手にあるレセプションルームには、フランスから輸入された24灯のアンティークシャンデリアがあり、大きな存在感を放っています。このシャンデリアは19世紀のフランスで制作された物ですが、様式は18世紀のルイ15世様式で籠型と呼ばれる形状をしています。金属部はブロンズが使用されています。現在はロウソク型の電球が使えるように配線がされていますが、制作された当時は当然本物のロウソクを使っていました。ロウソクを灯すと、煙の煤(スス)ガラスを汚しますので、頻繁に掃除をしなければいけません。煤の付いたガラスやクリスタルガラスのパーツを高い所にあるシャンデリアから取り外して、一つ一つ綺麗にしていく必要がありました。もちろん元に戻すのも手間がかかります。そういった点でも昔のシャンデリアはとても贅沢なものだったのです。
レセプションルームの壁に飾られている静物画の両端にはブラケットライトが飾られています。静物画やその下にあるマントルピース同様に、18世紀フランスで作られたもので、同時期にヨーロッパで流行していた中国趣味の美術様式「シノワズリー」をテーマとしたレセプションルームの雰囲気とよく馴染んでいます。金メッキしたブロンズのブラケットのロウソク立てには板金の枝葉が絡みつき、先端にセーヴル焼きの磁器の花が咲いています。いわゆるガラスのシャンデリアは器具が光を受けることで色の分解が起こり、透過光の美しさを演出します。それに対し、このブラケットライトは器具自体が彫刻のような表現をしているのが特徴です。
ホテル1階の回廊奥の突き当りには、ペアになっている12灯のシャンデリアがあります。これらは20世紀イタリアのシャンデリアで、オーナーが縦長のデザインを気に入り、パリのオークションで購入したものです。黒いガラスのパーツがついているのがイタリアらしい、印象的なシャンデリアです。

エントランスホールと2階回廊のシャンデリアはアンティークではなく、全て新しいイタリア製のシャンデリアで、透明感のあるガラスがライトや日の光に照らされて美しく輝きます。
2階回廊のシャンデリアは東側のガラス窓の手前に位置しているため、日が昇る時間に通ると、光が壁にプリズムのように反射する様子が見られます。シャンデリアが朝日に照らされ輝く様子は、爽やかな晴れの日の訪れを教えてくれます。

レストランの隣にある、ライブラリーを併設するバー「ル・レーヴ」にお越しになる機会がありましたら、ぜひご覧いただきたい照明が読書灯です。パリのモンパルナスにある中堅ホテルの改装時にオークションに出されていたものを購入し、日本で使えるように配線を整え、綺麗に清掃して大切に使用しています。ソファに座って何かを読む際に手元が明るくなるよう、支柱がカーブを描き、その先にランプが手前に張り出すような形でついているのが単なる「フロアランプ」とは異なっています。一般にフランスではホテルでも家でも部屋の照明はそれほど明るくありません。当館でもバーの店内の明るさは抑え、必要な箇所だけを明るく照らすことで灯火の明暗を印象的に演出しています。今の日本には珍しくなった「陰影礼賛」が残されています。
最後にご紹介したいのは回廊のブラケット照明です。器具自体には何の飾りもありませんが、この照明があることで回廊の半円天井(ヴォールト)の曲面が美しく表現されています。これが無いとのっぺりとした印象を受けてしまうかもしれません。照明器具にはそれ自体が美しく輝く物だけではなく、空間を美しく演出することに特化した物もあるのです。
ここまでご紹介してきた照明器具は新品のものから19世紀、20世紀に作られたアンティークのものまで様々です。一つ一つを見るとまったく違う個性を持つものですが、館内全体を見渡した際に、すべてのものが昔からそこにあったかのように調和がとれています。ホテルを訪れるすべてのお客様に「上質なフランスの邸宅」を体験していただくべく、あえて歴史を感じるものと新しいものが混在するようにしています。
古いものを大切に守りながら、現代の物も足されていく、そんな空間の中で過ごすフランスの邸宅ならではの居心地の良さをホテル ドゥ ラルパージュで味わっていただきたいのです。
これは、照明器具だけではなく館内にある絵画や備品などにも言えることです。
周りに広がる雄大な蓼科高原の自然に抱かれながら、フランスの優雅な日常を体験していただければ幸いです。是非、蓼科にお越しの際は当館へお立ち寄りいただき、館内の細かなこだわりまで余すことなくお楽しみいただければ幸いです。
館内の絵画についてはこちら Vol.1、Vol.2、Vol.3、Vol.4
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